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サハラ砂漠からのメール

サハラ砂漠からのメール

20日、FBを通じて、貴重な情報をくれるアルジェリア南部の青年政治家に対し、アルジェリア当局がテロに断固とした姿勢を示したことを支持し、敬意を表すると伝えておいたところ、夜になってこれに対する返信があった。示唆に富む情報であるので、本人の許可を得て、以下にそのままを訳出した。

兄弟へ

 この作戦の重大さ、特にその治安情勢や経済、社会、政治面での影響の大きさを考えるとき、貴殿のように寛大な理解を示す人は少なかろうと思う。私は、ここに全ての犠牲者に対し哀悼と同情の念を表したい。今現在も、「多国籍テロリストグループ」が残した地雷の撤去の困難さのために、ご遺体が発見されつつある過程にある。重要ないくつかの点を指摘したい。

1)武装勢力は、投降と人質の解放を拒み、治安部隊側に、包囲を解いて外国人人質と共に逃走できるよう道を開けろと要求していた。マリへ逃げ込み、同国の戦争に人質で影響を与えるためである。従って、強行解決はとり得る唯一の手段であった。

2)アルジェリア当局が沈黙を守ったのは、武装勢力が大量の武器で武装していたため、その捜査上、秘密性が重要であったからだ。リビアやチュニジアに武器庫がある可能性があった。秘密裏に武装勢力の侵入経路を辿った結果、チュニジア南部に大量の武器を隠匿している武器庫が発見された。

3)私達の住むインサラ(アルジェリア南部)は、マリ及びニジェールとの国境が近く、カダフィ政権の崩壊以来、不安定な治安状況の中で暮らしている。私達の地域には現在も稼働中の天然ガス施設が3つあり、外国人が多く居住しているが、400人以上いた彼ら外国人労働者は、それ以来国外退去を余儀なくされた。それぞれの天然ガス施設は、今回攻撃を受けた施設と同じ規模のものだ。その上更に3つの施設が建設途上であるが、その建設を監督する外国人が去り、労働者は解雇されてしまった。この面でも、問題は残されたままだ。

4)問題の根本原因はフランスがもたらしたと言える。NATO軍と共にカダフィ体制を崩壊させたのはよいが、リビアに混乱をもたらしただけで、カダフィの武器庫に多数収蔵されていた武器の管理をおろそかにした。このため、武器はあらゆる方面に拡散し、テロ組織はいともたやすくそれを手にすることができた。その上で、仏はマリに軍事介入し、トワレグ族とテロリストの区別をすることなく攻撃した。

メールは以上である。

なお、冒頭に述べた「アルジェリア当局の武力解決を支持する」私の立場というのは、何も相手の機嫌を取ろうということで述べたのではない。人命尊重の観点から、武力行使がやむを得ない場合に限られるべきことは無論であるが、最後には、テロの被害を食い止める決断が迫られるのは仕方のないことである。英首相も、当初アルジェリア当局の姿勢に不満を示していたが最後には、「責められるべきは卑劣な犯罪を起こしたテロリストであり、治安部隊ではない」との立場に変わったと報じられた。米国務省も同じだ。すべての事情に思いやりをめぐらせれば、誰もアルジェリア軍を非難することはできないはずである。このことは、現地の空気を吸って帰ってこられる若い政務官も肌で感じたであろう。聞いてみたいものである。

-この小稿を、日本アルジェリア友好の仕事なかばにして早逝された、故渡辺伸大使に捧げる- (J)

エジプトの混乱に学ぶ

22日、エジプトのムルシー大統領が「憲法宣言」と呼ばれる強権発動ともとれる決定を発表したことから、エジプトの政情不安が非常に高まっている。その原因と見通しについて、とりあえずの考察をした。

<政治力学的見地から>
大別して、①軍エスタブリッシュメントと旧政権エリート、②ムスリム同胞団及びイスラム過激主義者、③自由主義者・市民勢力・革命青年勢力の三つ巴の戦いとモデルを単純化しよう。チュニジアで吹いた春の嵐は瞬く間にエジプトに飛び火し、予ねて反政府運動を繰り広げていた③の勢力が最初に立ち上がった。そして、①に首根っこを押さえられていた②は、千載一遇のチャンスと見て③に加勢した。②はその動員力と数が圧倒的であるため、①は強権で押さえる手法を得策とせず、②に表向き主導権を握らせて、陰の将軍となる選択をした。いわばトカゲのしっぽ切りで、ムバラク一家は放り出された。この体制に米政権はお墨付きを与えた。ここまでが第一幕。

①②③という分け方とは別に、イスラム過激主義対世俗主義という闘いがある。②がその存立の目的であるイスラム法に基づく国家作りを憲法改正で一気に実現しようとしているのに対し、①③の構成要員は基本的に世俗主義である。神の名による独裁を許せば、③は何のために自由を求めて立ち上がったかわからなくなるし、①はこれまで弾圧したことへの復讐を受けて粛清されると怯えている。そこで両者には共闘関係が見られる。

②は、憲法改正前に行われた選挙で議会と大統領を選出しており、憲法起草委員会も支配、このまま行けばイスラム法に基づく憲法を制定できる。これに対して、①③の勢力はエジプト司法が持つ違憲立法審査権で、議会、大統領、起草作業、こういったものをすべて無効にする戦略をとり得る。そこで大統領は先手を打って、司法の権限を台無しにしてしまうこととした。これが「憲法宣言」の意味である。

①勢力(+世俗主義者)の期待を担って大統領選を戦ったシャフィーク氏。
僅差で敗れ、UAEに逃亡した。同胞団は逃亡に目をつぶった。
写真は、同氏を支持するフェイスブックのページより

<法学的見地から>
革命は起きたが、エジプトではチュニジアのようにまず制憲議会を開いて憲法を制定し、これに基づく議会選挙を行うという手順が踏まれなかった。軍が管理する中でまず議会と大統領の選挙が行われ、憲法改正は後回しになった。現状は、軍が非常事態を宣言しているわけではなく、「公正な選挙」で選ばれた大統領と議会が、古い憲法の下で移行的な政治を行っている。その中で、新憲法制定までの間、必要に応じ大統領が憲法に代わる「宣言」を出す、というのはあながち悪いことではない。

しかし、今回の宣言は、(1)大統領の決定を司法が破棄することはできない、(2)人民議会、憲法起草委員会の解散は認めない、(3)大統領が国が脅かされていると認めるときは必要な措置を取ることができるといった、ほぼ「独裁者宣言」のような内容になっている。また、同時に大統領令を出して、旧政権の犯罪追及に弱腰だった検事総長を解任、交代させ、旧政権の残党は犯罪者として裁判をやり直す、と宣言してしまった。

これに反発した世俗主義者(上記の③+①)と大統領支持派(②のイスラム過激主義者)が衝突し、白昼殺し合いをするほどの治安悪化に陥る懸念が十分高まったため、司法最高評議会(法曹の最高機関)は、大統領への反発の態度を緩め、助け舟を出した。それが「大統領決定の(司法判断での)不可侵性は主権事項に限られる」という解釈を大統領が認めよ、という提案であった。ムルシー大統領は、この歩み寄りによって窮地を救われ、これを受け入れると同時に「憲法宣言は憲法改正までの一時的な措置である」点を強調した。これによって27日に予定されていた両陣営の「百万人デモ」が大衝突に発展することが回避された。

司法最高評議会とは、日本で言えば最高裁と同じ立場である。「大統領決定の不可侵性は主権事項に限られる」とはどういう意味か。それは、我が国でもかつて議論となった「統治行為論」(長沼ナイキ訴訟など)を想起されるとよい。違憲の疑いがあっても、それが国民の付託を受けた政府の重大な「統治行為」である場合、司法は判断を遠慮するというのが正しい民主主義だ、ということである。つまり、今回エジプト「最高裁」は、統治行為と判断されるほどの重要決定については異議を挟まないので、「何でもかんでも大統領の言うとおり」という宣言だけはやめてくれ、と申し入れ、大統領が、もちろんそのつもりだ、と応じたということなのだ。

<今後の展開見通し>
大統領選挙の僅差決着という結果からも明らかなように、エジプトは中東でも稀な信仰心の篤い国民の社会であるが、同時に、世俗主義の重要性、自由の重要性をよく理解する勢力も力を持っている社会である。したがって、ムスリム同胞団は、この機に乗じて強権支配を達成しない限り、再び弾圧される危機に瀕しており、どのような手を使っても強権支配に向かおうという行動を今後もとるだろう。一方で、エジプト社会がイスラム法による支配・不自由に甘んじ、世俗派が黙っているなどということは有り得ない。したがって、基本的に両者は今後も対決を繰り返す。この対決が明らかな治安混乱を生ぜしめるときは、軍が介入し、軍事政権となる。つまり、結局は、強権によってしか、この国を治めることはできないということだ。これが第ニ革命の結論になるだろう。この方向性の亜流としては、世俗主義の「自由将校団」が出てきてクーデターをするというのもある(第ニのナセル)。

ただ、今回のように話し合い決着で危機を回避する、という理性も当然ながら働く。イスラム過激主義者自身が世俗化する、というプロセスを経れば、名前だけのイスラム政権存続という現象も考えられる。地域のスンニ派諸国(サウジ、カタール)や米国は、現状ではこの方向性を願っているように見える。(J)

第二次オバマ政権下の中東

小生のブログのタイトル「global middle east」は、「中東の動きは世界に影響を与え、世界の情勢は中東に影響を与える」という、いわば当たり前の原則をリマインドしている。当たり前ではあるけれども、絶海の孤島に住む日本人にとって忘れがちな基本を繰り返し想起してもらうのに都合がよいのでこう付けてある。

世界情勢とリンクしていない地域情勢などないのだが、中東はよりその度合いが強く、また直接現れる点で分かりやすい。1年ぐらい前から、イスラエルとイランの問題はどうなるか、アラブの春はどうなるかと聞かれる度に、「今年は選挙の年。選挙結果を皆が待っている。選挙までは動かない」と答えてきた。

その選挙(大統領選)が大方の予想通りに終わったその瞬間から、中東は大きく動き出した。イスラエルがガザ地区への攻撃を始めたのは、ネタニヤフ首相がオバマに祝意を述べてから24時間も経っていない8日のことだった。ブルドーザー等とともに侵入したイスラエル防衛軍兵士が銃を乱射してパレスチナの子ども1人を殺害している(アルジャジーラ報道)。

イスラエルにとってもっともうれしい路線である「武装抵抗」を「飯のタネ」にしている愚かな指導部(ハマス)は、相手の意図を知りながらも「思う壷」に落ちることしかできない。その日から対決をエスカレートさせることしかできず、軍事的最高幹部とされる「カッサーム部隊」のジャアバリ副司令官をピンポイント爆殺されるに至って、虎の子のイラン製高性能中距離弾「ファジュル5」をテルアビブめがけて撃ち込んでしまった。これで、ネタニヤフはクネセット(国会)選挙での大優位と、イランの神権政治への更なる国際的締め付け確保という二鳥を落とした。アラブ諸国や世界中の「市民団体」が如何に「イスラエルの自衛権」の欺瞞を憤慨したところで、これに理解を示してイスラエルのガザ侵攻を支持するという欧米の立場は保障されたのである。

一体、どうやってそんな飛び道具を密輸したというのか!!パレスチナ(ハマス)側の「武力抵抗には正当性がある」という「大義」の訴えは百も承知だが、大義で飯を食っているのは自分たち一部だけであり、民は飢えながら殺されている。この矛盾に答えを出すことができるのは、パレスチナ人自身をおいて他にない。(蛇足を言えば、ハマスはイランとアサド政権を頼っていたが、今般、アサドに徹底的に嫌われてダマスカスを追放された。)

ファジュル5がガザ地区に搬入されるためには、シナイ半島からの密輸以外に方法がないが、イランはいったんスーダンに輸出、そこからシナイ半島の武装勢力経由密輸されるルートがあるのではないかという情報がある。いずれにしても、イスラエルの情報網はこのミサイルの存在をかなり前から掴んでいて、それを使わせる機会を狙っていたと思われる。

オバマ政権のこれからの4年間は、極東にも、また中東にも、静かに危機のタネを貯めていく4年間となる。熱い戦争に関与するのではなく、熱い戦争の危機を煽る人と、それをなだめる人が芝居を演じる間に、着実に武器販売と軍備関連の売上を伸ばしていかなくてはならないからだ。それが欧米、露、中というグローバル・プレーヤーの全ての利益に一致している。属国日本も実はそうである。もちろん、熱い戦争が絶対に起きないという保障はないが、起きても拡大する状況にはないと言っていい。

地域のメジャーなプレイヤーの利益にもそれは一致している。この点についての説明は別の機会に譲るが、いずれにしても、これからの数年間、シリアの人々の苦難は続く。それはガザ地区もイラクもレバノンも然りである。抗しがたい新たな「冷戦構造」が中東を支配している。(敬称略)(J)

イスラム過激主義に対するフランスの答え

職業柄、中東からの絶え間ないニュースの中に身を置いているが、28日、「これは?」と注目した2つのニュースがあった。ひとつは、「仏内相、モスク落成式でイスラミストは追放すると宣言」というものであり、もうひとつは「預言者侮辱の映画製作者逮捕」のニュースであった。

1.「ヴァル内相、大モスク落成式で過激なイスラム主義者は追放すると演説」

ストラスブールにフランス最大のモスクが竣工した。27日、その落成式があり来賓のヴァル内相が歯に衣着せぬ演説をしたのだ。こういう発言をできる政治家が日本にいるだろうか。報道から、重要部分を2箇所だけ抜き取る。

「イスラムはフランスに居場所を有する。フランスのイスラムは、フランスの一部であるからだ。」

「憎しみ合うことを扇動する者、蒙昧主義の徒、原理主義者、我々の価値観と制度を破壊する者、女性の権利を否定する者、そういう人々の居場所はフランスにはない。我が国にいながら、法律を破り、社会の根源に敵対する者たちが国内に留まる必要はない。イスラム教徒であると主張しつつ公共の秩序に重大な脅威を与え、国の法律と価値を尊重しない者共は容赦なく追放する。」

モスクの落成という祝典に臨んで、いくら「過激派は…」と断ってもイスラム教徒は追放するぞという強い言葉を堂々と発することができるというのはどういうことか?それも、平時ではない。預言者ムハンマドを侮辱した米映画問題で世界中のイスラム教徒の感情に火がついているタイミングであり、その上に仏風刺漫画誌の掲載した預言者風刺画の問題が追い討ちをかけていた。

その秘密、というよりきちんとした理由はフランスの世俗主義にある。日本のような消極的政教分離主義では、モスクに内相が招かれる、ということ自体が禁止され得ることであるが、フランスやトルコのような積極的政教分離(≦世俗主義)においては、世俗的価値を優先させ、日常生活における「宗教的行動」をしっかりと禁止することができるのである。

仏週刊誌の問題では、在外公館に最大の警備警戒措置を尽くしても、表現の自由擁護の立場を貫いた。イスラム諸国では一部騒ぎとなったが、フランス国内では目立った抗議行動は起きなかった。その自信が内相の言葉の奥に込められていたに違いない。
Vive la France!

2.「預言者侮辱の映画製作者逮捕」

近年稀にみる「傑作」をYouTubeに流し、世界を大混乱に陥れた男が逮捕された。しかし、それは映画出演者を騙し、稚拙な方法で吹き替えをして醜悪なイスラム冒涜映像を作った罪ではなかった。元来、人を騙して財産を奪う詐欺罪で刑を受けている人物だったから、保護観察違反で再収監されたのである。

男は逮捕されたが、この男の作った作品は今もYoutube上にある。先ほど覗いてみたら480万view以上を記録していた。

ほとんど精神異常に近い、ふざけた犯罪であった。しかし、それがもたらした重大な結果に責任を有するのは誰か?「アメリカが悪い」、「イスラエルが悪い」というイスラム過激主義政権の主張は、われわれ異教徒だけでなく、真のイスラム教徒も受け入れることはできないだろう。(J)

天国は殉教者で満席

イスラム教、キリスト教で宗教や国のために亡くなった人は「殉教者」と呼ばれる。これらの「殉教者」たちは直接天国に行ける。
しかし今回、亡くなった人の数が膨大なため、天国の管理者であるエンジェルからこのようなお知らせがあった。

「皆さん、現在天国は非常に混雑しており、これより2ヵ月間、新規者の受け入れができません。特に爆発、自爆、空爆で亡くなられた方々は少々地上でお待ち下さい。
また、天国のファーストクラスご利用者の方々が1年間延長されています。これから2ヵ月後に天国に入られる方はフーリー(アラビア語で天女の意味)を2人のみしか同伴させることができません。
何卒ご了承いただきますよう、よろしくお願いいたします。」